自動車の運転免許を取得するとき、必ず悩んでしまうことがあります。
それは、MT(マニュアル)かAT(オートマ)どちらを選ぶかです。
何も考えずに選んでしまうと、入校後に後悔する可能性があります。
今回の記事では、
・MT・ATのメリット・デメリット
・その他の違いについて
・MT・ATを選ぶ上で気になること
について、紹介していきます。
私は北海道の自動車教習所で、7年半指導員をしておりました。
実際に入校した生徒さんから、MTやATの選択について多くの意見を聞くことができました。
「〇〇を選んで後悔している」という言葉を、何度も聞いたことがあります。
今回の記事を読んでいただければ、MTとATの免許を選ぶときに迷わず、そして後悔しないように行動できるはずです。
ちなみに今回の記事では、
マニュアル:MT
オートマ:AT
この表記で統一しています。
MT・ATの違いは?
MTとATの最大の違いは「ギアチェンジを運転者が手動で行うかどうか」です。
「ギ、…ギアチェンジ…?」
このような声が聞こえてきそうですね!笑
車が速度を出すためには、「速度を出せるギアに切り替える」必要があります。
ATの場合は、アクセル(速度を出すときに踏むペダル)を踏めば、自動的にギアが切り替わります。
反対にMTの場合は、
・チェンジレバーの操作(左手で操作)
・アクセルペダルの操作(右足で操作)
これらの操作をバランス良く行い、スピードに合わせてギアを変える必要があるのです。
※簡単にいうと、両手両足を常に使って運転します
MTもATも、基本的にギアが変わる仕組みは変わりません。
その操作を、自動で行うか、手動で行うかの違いがあるということです。
MT・ATのメリット・デメリット
ではMTとATについて、メリットとデメリットを紹介します。
教習中のことだけでなく、免許取得後の情報も含まれています。
MTのメリット
ギアチェンジを理解できる
MTで免許を取得する最大のメリットは、自動車のギアチェンジの仕組みを理解できることです。
MTもATも、基本的に速度を出すための構造は同じです。
ギアチェンジを手動で行うことにより、自動車の理解が深まり、「ATの車に乗ったとき」にも、適切なギアチェンジができるようになります。
AT車は自動でギアチェンジが行われますが、実際の運転中、手動でギアを操作する機会はあります。
MTで免許をとればATも乗れる
これも大きなメリットですが、MTで免許を取得すればATの車に乗ることができます。
言い換えるなら、2種類の免許を取得できるといっても過言ではありませんね。
純粋に「運転が楽しい」
MTで免許を取得する生徒さんの多くは、場内コースの乗り始めの時期に苦労します。
しかし、運転操作にも慣れ路上コースの練習に入ったころには、
「運転が楽しい!」
「MTにしてよかった!」
このように言う生徒さんが多くいます。
チェンジレバーの操作をする感覚は、MTでしか味わえない独特のものです。
MTのデメリット
運転操作が複雑
先ほども少し触れましたが、MTは両手両足を使って運転操作を行います。
練習を重ねれば、身体が自然に動いてくれるのですが、最初はなかなか難しいものです。
複雑さになれるのも個人差があるので、乗りはじめの時期は慌てずに操作を覚えることが大切です。
エンストすることがある
MTの免許取得で有名なキーワードといえば、間違いなく「エンスト」です。
※エンジンがストップすることを、略してエンストといいます。
これは、MTとATどちらで入校している方でもよく知られている言葉です。
エンストが怖いのでATを選びましたという生徒さんも多くいます。
確かに、路上教習中にエンストしてしまうと、他の交通に迷惑がかかったり、最悪の場合追突される可能性すらあります。
だから追突されることがあるんです。
心が折れてしまうことがある
運転操作が複雑のところでも触れましたが、乗りはじめの時期にうまくいかず、心が折れてしまうこともあります。
もちろん、就職先でMT免許が必要だという方の場合は、歯を食いしばって頑張る必要がありますが……
やはり運転操作は個人差がありますので、本当に難しくて苦しい場合は、指導員に相談してみましょう。
ATのメリット
運転操作が比較的簡単
ATの操作は、基本的にアクセルとブレーキ、ハンドル操作で完結します。
MTのように、左足のクラッチ操作や、左手でのチェンジレバーの操作がありません。
ですから生徒さんからは、「ゴーカートみたいだね!」と言われることがあるくらいです。笑
人生ではじめて運転操作をするわけですから、比較的簡単に操作できることは、心理的な部分でプラスに作用します。
エンストすることがない
MTのデメリットで触れましたが、ATの場合はエンストが基本的にありません。
ですから路上で一般の車両と一緒に走行するときも、発進時の失敗などがないため、緊張せずに運転することができます。
クリープ現象で低速運転が容易
「クリープ現象」がATにはあります。
クリープ現象とは、チェンジレバーがPやN以外の位置にあるとき、“ブレーキを離すだけで車が動き出す現象”のことをいいます。
※チェンジレバーのPやNについては、教習所で習ってくださいね✨
ブレーキを踏みながらゆっくり動くことができるので、速度の調節が容易です。
後退するときなどは、ゆっくりとした操作が必要なので、低速運転がしやすいことはメリットになります。
ATのデメリット
ギアチェンジが理解できない
MTと違い、基本的にギアチェンジをせずに運転できるのがATです。
※状況によっては、ATでもギアチェンジを手動で行う場合があります
指導員の指導方針によっては、ATのギアチェンジをあまり体験せずに卒業してしまう場合があります。
しかし、長い下り坂やスリップしやすい路面などでは、AT車でもギアチェンジは必要です。
ギアチェンジに対する理解が深まりにくいことは、ATのデメリットといえます。
※学科教習の中で、ATのギアチェンジを習うカリキュラムがあるにはあるのですが、わかりにくいです
指導員にどんどん質問することをおすすめします。
踏み間違いをすると急発進する
先ほど、“クリープ現象”について紹介しました。
クリープ現象のおかげで発進が簡単なのですが、アクセルを強く踏み込んだ場合に急発進する可能性があります。
MTの場合は、アクセルだけでなく左足のクラッチ操作が必要なので、暴走するリスクは少なくなります。
しかしATの場合は、アクセルを強く踏み込むと一気にスピードが出てしまうので注意が必要です。
その他の違いについて
メリットとデメリットでも、MTとATの違いについて紹介しました。
それ以外の違いについて、こちらで紹介していきます。
教習生の違い
一昔前であれば、「男はMTをとるのが普通」などという、頭の中が化石かのような意見が当たり前でした。笑
しかし最近では、卒業後の自分の活動に合わせて、免許の種類を選ぶ方が大半です。
免許合宿に来る男子生徒さんも、多くはATで免許を取得するようになりました。
後からも説明しますが、ATで取得しても、MTの免許に進化させる手段もあります。
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時限数の違い
教習所を卒業するためには、運転と学科教習の、受けなければならない規定時限数が決められています。
MTもATも、学科教習の数は同じです。
しかし、運転の教習時限数に、若干の違いがあります。
MTの場合、ギアチェンジ操作など覚えることがATと比べて多いので、規定の時限数が、“3時限”多く設定されています。
教習料金の違い
上でお伝えしたように、MTの場合、3時限分の教習が多いので、MTで免許を取得する方が料金が高く設定されています。
教習所での料金をとにかく抑えたい!という方は、ATでの免許取得がおすすめです。
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気になる検定の合格率は?
ここまでの記事を読んでいただいた方は、
「MTは操作が難しいから、合格率も悪そうだな……」
このように思っているかもしれません。
元指導員の立場から申し上げると、合格率にそこまで違いはありません。笑
どの教習所の指導員も、指導のプロですから、MTとATに関わらず、“検定に合格するレベル”であるとみきわめをした上で、検定を受けてもらいます。
MT・ATを選ぶ上で気になること
最後に、MTとATを選ぶ上で気になることを紹介していきます。
免許をとった後と、教習所でのこと、二つにわけてお伝えしますね!
免許取得後のこと
MTはどこで乗る機会がある?
MTに乗る機会としては、大きく分けて三つです。
・型式の古い車
・事業用の車
一般的に出回っている自動車のほとんどはAT車です。
スポーツカーが大好きです、とか就職先の営業車で乗ります、という場合はMTに乗る機会があるといえます。
私が受け持った生徒さんの中には、「自宅のセカンドカーがMTの軽自動車です」というパターンも多くありました。
MTに向いている人はどんな人?
やはり運転が好きな方は、MTが向いているといえます。
MTのイメージとしては難しそうなイメージがあるかもしれませんが、何より運転が楽しいのです。
ですから、車の運転が好きな方は、将来使うか使わないかに関わらず、MTを選んでおいて間違いないです。
乗りはじめの難しさも含めて、楽しんじゃいましょう!
教習中のこと
MTで入校するとATは乗れないの?
MTで入校している場合であっても、ATの車に乗る機会はあります。
場内のコースで1度乗ることが決められていますし、時期によっては路上のコースでもATの車で教習することがあります。
※時期や教習所によっては、「運転シミュレーター」でATの教習を行います。
MTで入校した場合でも、必ずATに触る機会はありますので安心してくださいね✨
途中から切り替えることはできる?
MTで入校して教習を進めている場合、途中でATに切り替えることは可能です。
やはり操作が難しいという理由で、ATに切り替える決意をする方は当然います。
※教習所によっては、手数料などがかかる場合があるかも……
注意が必要なのは、ATで入校していて教習を進めている場合は、MTに切り替えることができません。
あとからMTにしたいと思っても、切り替えることはできませんので、その点はあらかじめ抑えておきましょう。
AT限定解除って何?
ATで免許を取得したあとでも、MTの免許にグレードアップすることが可能です。
「あらためてMTの免許を取り直す必要はない」ということですね。
このどちらかで、ATの限定解除を申し込むことになります。
一般的には、ATの免許を取得したのと同様に、教習所に入校して数時間MTの練習を行います。
そして試験をクリアすることで、ATの限定を解除することができます。
まとめ
今回は、教習所の入校時に悩みがちな、MTとATのメリットとデメリットについて紹介しました。
MTとATのメリット・デメリットについて、以下の表で復習しましょう。
メリット | デメリット | |
MT(マニュアル) |
・ギアチェンジを理解できる ・MTをとればATも乗れる ・純粋に「運転が楽しい」 |
・運転操作が複雑 ・エンストすることがある ・心が折れてしまうことがある |
AT(オートマ) |
・運転操作が比較的簡単 ・エンストすることが基本的にない ・クリープ現象で低速運転が容易 |
・ギアチェンジが理解できない ・踏み間違いで急発進してしまう可能性 |
さまざまな違いがありますが、基本的にMTでもATでも、安心して教習を進めることができます。
大切なことは、「将来、どのように車を活用するか?」です。
絶対にMTに乗る機会はないだろうなーと思っている方は、ATを選んでも大丈夫です。
私の個人的な意見としては、特別な理由がなく、教習の料金にもこだわりがなければ、MTを選んでおくことをおすすめします。
今回の記事を参考にして、MT・ATを選んでいただけると嬉しいです!
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